ブラックペッパー、黒胡椒の使い方とよく合う料理
ブラックペッパーは古くから使われてきた香辛料で、かつては非常に高価なものとして取引されてきました。今回はブラックペッパーの歴史や名前の由来、ブラックペッパーの生成法などを見ていき、味や香りの特徴などを解説します。
そのうえでブラックペッパーの料理での使い方や、粒(ホール)のブラックペッパー、粗挽き、粉末のブラックペッパーの使い方について取り上げます。さらにブラックペッパーの購入の仕方や粒を挽くのに便利なミルの紹介もしていきます。
胡椒のヨーロッパへの伝来
名称の由来ですが、ヨーロッパでは、長こしょうを意味するサンスクリット語「pippali(ピッパリ)」から派生した言葉です。長こしょう(ロングペッパー)は胡椒の近縁種で、胡椒の実は丸い形をしていますが、長こしょうは細長い形をしています。
原産地の南アジアではまずはロングペッパーが先に広がり、地中海に運ばれたのもロングペッパーが最初だと思われます。紀元前4世紀のギリシャの哲学者の記述にもロングペッパーとブラックペッパーのことが掲載されており、1世紀のローマではロングペッパーはブラックペッパーの4倍の値段がつけられていたという記録も残っています。176年にローマ帝国はロングペッパーとホワイトペッパーへの関税も実施しています。
ちなみに下の画像はロングペッパーとブラックペッパーとホワイトペッパーです。ロングペッパーについては
ロングペッパー、ひはつの使い方、味や香りと効能でも詳しく解説しています。
胡椒の中国や日本への伝来
東洋中国では胡椒は漢の時代、シルクロードを通って西洋から伝来したもので、胡(西城のことで、外国を意味する)と椒(山椒のような刺激あるもの)のこの2つの言葉を組み合わせて胡椒と呼ばれるようになりました。日本に入ってきたのは奈良時代初期で、同じく胡椒という名称が使われています。
胡椒の原産地
ペパー(胡椒)はこしょう科の熱帯常緑ツル植物であるピペル・ニグルスと呼ばれる植物の果実を使ったものです。原産地はインド南部マラバル海岸の熱帯雨林で、現在ではインド、インドネシア(スマトラ)、マレーシア(サワラク)、ブラジルなどが主な栽培地です。
ブラックペッパーの生成法
胡椒には果実を摘み取るタイミングと、その後の処理で黒や白、グリーンなどいくつかの種類に別れます。黒胡椒は、黄みがかって熟し始めた未熟果を摘み取り、数日間保管したあと天日乾燥させると、しわがより固くなって、色も黒っぽくなります。乾燥させることで外皮が黒褐色に変化していきます。
重さは生の果実の3分の1ほどになります。白胡椒はさらに外皮をはがす工程も必要なため手間がかかります。その分黒胡椒よりも値段が高くなります。ちなみに下の画像はホワイトペッパーです。グリーンペパーは黄みがかる前の緑の未熟果をフリーズドライで乾燥させたものです。
特徴 | 解説 |
学名 | Piper nigrum |
名称 | ブラックペッパー(英)、黒胡椒(日本) |
語源 | pippali(長こしょう) |
原産地 | インド南部マラバル海岸の熱帯雨林 |
種類 | こしょう科の熱帯常緑ツル植物 |
使う部位 | 実 |
ペパーは昔の西洋では貴重なものとして大変重宝され、その価値は金1オンスに対してペパー1オンスで交換されていたほどです。オンスとは重さを計る単位で1オンスは28.3495グラムです。ペパーはスパイス貿易の主要な産品として扱われ、西洋と東洋で通貨と同等に扱われてきました。中国では西洋産のペパーを「西洋のサンショウ」と呼び、自国産のペパーとは別物としてみていました。中世ヨーロッパの時代でもペパーの価値は相変わらず高く、地代や持参金、税金として取り扱われてきました。
ブラックペッパーは香りや辛みが強い
黒胡椒は、さわやかで辛さが混じった刺激的な木のような香りと刺激的な辛みが特徴です。ホワイトペッパー(白胡椒)と比べると香りも辛みも強いのが特徴です。これは香り成分である製油は実は皮の部分に多く含まれていて、皮をはいで使うホワイトペッパーの方がそのまま使うブラックペッパー(黒胡椒)よりも香りが弱くなるからです。
また辛味成分であるピペリンとシャビシンは未熟果のほうが若干多く含まれているので、未熟果を使うブラックペッパーの方が辛味も強くなります。ロングペッパーはブラックペッパーよりも辛味は少なく、若干の甘みもあります。ブラックペッパーの味や香りについては
ブラックペッパー、黒胡椒の味や香りと効果・効能でも詳しく解説しています。
粗挽きすると白と黒が混ざる
ブラックペッパー(黒胡椒)が黒いのは表面の外皮の部分で、中身は白いので、粗挽きすると白と黒が混ざり合って見えます。
臭み消しや風味づけに
ブラックペッパー(黒胡椒)はホワイトペッパー(白胡椒)よりも香りも辛味も強いので、味の濃い肉料理などによくあいます。それ以外の料理でも全般的に使われています。例えば野菜料理、魚料理、麺類、シチュー、スープ、オムレツなどです。
食材に刷り込んでグリルにしても独特の風味と食感を楽しめます。
加熱で香りが飛ぶ
ブラックペッパーの香り成分は加熱により飛んでしまうので、風味を生かしたいなら料理の最後に加えるか料理を食卓に出す直前に加えるといいです。香りは粒よりも細かく挽いたものの方が強いので煮込み料理には粒を、香りつけなら粉末を最後にかけるといいです。臭み消しとして使う場合は料理の最初または途中で使います。
加工により3種類に分かれる
市販されてるこしょうにはホール(粒こしょう)、あらびきこしょう、粉末こしょうの三種類があり、それぞれに特徴が異なります。
粒こしょうの使い方
マリネや野菜のピクルスなどに使用。煮汁や油脂分に辛みや香りがよく溶け出す煮込み料理などに使われます。スープストックやだしじるに加えて使われることも多いです。
粒こしょうは叩いてつぶしたり、こしょう挽き(ペパーミル)で挽いて使うことも多いです。こしょうの香り成分は揮発性なため、挽きたてが香り、辛みともにいちばん引き立ちます。ペパーステーキのようなこしょうの香りを生かしたい料理では、市販のあらびきこしょうよりもむしろ、粒こしょうから挽き立てたものを使う方がおすすめです。挽き立てようにペパーミルがあると便利です。
実際にブラックペッパーを挽いてみる
粒のブラックペッパーをミルを使って実際に挽いてみました。使ったのはこちらのミルです。
まずはミルにブラックペッパーの粒をいれます。
最初は挽き加減を荒めにして粗挽きにしてみます。粗挽きだと下の画像のような仕上がりです。
次により細かく粉末になるように調整して挽いてみました。挽いた画像は下の画像です。
鍋の上で直接挽かない
ブラックペッパーの粒を煮立った鍋の上で直接挽いて加えるのは避けましょう。蒸気により変質しやすいので加えるならいったん小皿の上で挽いてから加えるようにします。
あらびきこしょうの使い方
手軽に使えるのが特徴です。あらびきは若干香りがとびやすくなってます。刺激的な香味が楽しめます。
粉末こしょうの使い方
適度な辛さと香りが特徴。パウダー(粉末)は若干香りがとびやすくなってます。
いちから粉末にするのにはかなり時間がかかります。その点最初から加工されているので料理に利用しやすいのが特徴です。肉や魚にふりかけたり、料理の味付けに利用したり、小麦粉などとあわせたりなど使い方はさまざまです。
オリーブオイルにレモン汁を加え、さらに粗挽きにしたブラックペッパーを加えるだけで簡単にサラダドレッシングを作ることができます。
ホワイトペッパーやブラックペッパー、ロングペッパーなどはどれも胡椒の一種です。一方同じようにペパーと名前がつくレッドペパー、チリペパー、カイエンペパー、カリフォルニアペパー、ペパーミント、ペパーハーブ、ピンクペパー(ポワブルローゼ)は胡椒とは関係ない別の香辛料です。これは最初に発見された辛い香辛料がペパー(胡椒)だったので、あとに発見された辛い香辛料にもペパーが使われたものと思われます。ちなみに下の画像はピンクペパーです。
ブラックペッパーを扱う大手メーカー
ブラックペッパーはホールや粗挽き、パウダーなどが市販されています。価格は200円台からあり、マコーミックやGABAN、S&Bの商品などが人気のようです。マコーミックはアメリカの大手スパイスメーカーで、日本ではユウキ食品が製造・販売を行っています。GABANは大手食品メーカーハウス食品の、S&Bは同じく大手食品メーカーのヱスビー食品のブランドです。ブラックペッパーはスーパーでもよく見かけますが、ネットからも購入可能です。
PR ブラックペッパーの商品一覧
ペパーミル付きのものも
ブラックペッパーの商品の中には容器にペパーミルがくっついたものも市販されています。以下はS&Bのミルつきのミックスペパーです。ミックスペパーとはブラックだけでなく、ホワイト、グリーン、ピンクペパーがミックスされたものです。下の画像で紹介している部分がペパーミルになっていて、ぐいぐいとまわすと胡椒をひいて、引きたてあらびきこしょうをいつでも利用することができます。
ペパーミルの内部は以下のようになっています。回転させることでブラックペッパーがすりつぶされ、あら引きされたブラックペッパーが出てくる構造となっています。
引く荒さを調節したいなら専用のミルを
ミルつきの商品では比較的作りが簡単なものが多いので、引く荒さなどを調整することはできません。上記の商品もあらびきしかできません。より細かくすりつぶしたいなら荒さを調節できる専用のミルを購入することをお勧めします。価格も比較的安価で分解して洗浄することも可能です。以下で人気のミルについて紹介します。
PR ミルの商品一覧
ブラックペッパーはホワイトペッパーとは違い香り成分が多く含まれる皮をそのままに乾燥させて作られます。そのため香りが強いのが特徴です。更に未熟果を使うので辛みも強いです。
料理で使うなら味の濃い肉料理などによく合います。このほか魚料理や野菜料理、麺類やシチュー、スープなど幅広い料理で使われます。
粒こしょうはそのままスープや煮汁などにいれて料理で使えます。粗挽き、粉末にしたブラックペッパーは香りが強い反面、熱で変質しやすいので香りを生かしたいなら料理の最後の方で使うのがポイントです。
※参考書籍
スパイス完全ガイド
スパイスのサイエンス スパイスを科学で使いこなす
食材図典 生鮮食材篇
素材よろこぶ調味料の便利帳
調理以前の料理の常識2
ハーブ&スパイス大事典
最新!アロマセラピーのすべてがわかる本
この記事が気に入ったらフォローをお願いします。
最新情報をお届けします。
この記事を書いた人
生活知恵袋
生活知恵袋の管理人で管理人の名前も生活知恵袋と申します。料理研究家です。2002年より当サイトを運営。野菜を中心に食品に関する見分け方や保存方法などを、実際の検証とともに解説した記事を多数執筆。光熱費や水道代の節約、衣服や住まい、掃除に関する豆知識も紹介。
>> 詳しくはこちら