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マスタード、からしの使い方とよく合う料理



和辛子、マスタードの画像


はじめに



マスタードや芥子(からし)といえば、鼻につく強烈な刺激をイメージする方も多いかと思います。料理でもよくつかわれる香辛料の一つですが、今回はまずはマスタードとは何か、からしとは何かについて解説します。またマスタードやからしの味や香りの特徴についてみていきます。

さらにマスタードやからしの料理での使い方や、粉末、種子それぞれで使い方、練り方なども取り上げます。さらにマスタードの料理以外での使い方や保存方法、マスタードやからしの購入方法や歴史についても詳しく解説します。






マスタード、からしの紹介



マスタード、からしの種類

マスタードとはからしのことで、マスタードには大きく分けてホワイトマスタード(イエローマスタード)、ブラウンマスタード、ブラックマスタード、オリエンタルマスタードの4種類があります。ホワイトマスタードは白芥子(しろがらし)、ブラックマスタードは黒芥子(くろがらし)、オリエンタルマスタードは和芥子ともいいます。

いずれもアブラナ科カラシナの完熟した種子を使いますが、からしなの種類が異なるので味や辛さに違いが生じます。

■白辛子(ホワイトマスタード)
アブラナ科シロガラシ属シロガラシ。ヨーロッパと北アメリカ原産。種子は黄色または薄黄色。

ホワイトマスタード(白芥子)の種子

■和辛子(オリエンタルマスタード)
アブラナ科アブラナ属カラシナ。中央アジア原産。種子は黄色または薄黄色。

和芥子の粉末

■黒辛子(ブラックマスタード)
アブラナ科アブラナ属クロガラシ。中東が原産。種子は黒または黒褐色。

ブラックマスタード(黒芥子)の種子

■ブラウンマスタード
インド原産。種子は黒または黒褐色。

ブラウンマスタードの種子


和芥子と洋芥子

和芥子はオリエンタルマスタードのことで、それ以外のホワイトマスタード(白芥子)やブラックマスタード(黒芥子)、ブラウンマスタードなどが洋芥子となります。日本では一般にからしといえば和辛子をさし、洋辛子のことをマスタードと呼ぶことが多いです。


マスタードの語源

マスタードはラテン語の「ムスツム・アルデンス(燃えさかる新ぶどう酒」とというラテン語がその由来で、昔、からし菜の種子をすりつぶして、ぶどう酒(ムスト)を加えて練り上げたことからムスツム・アルデンス(辛いムスト)と呼ばれるようになりました。これがいつの間にかマスタードの種子そのものの呼び名となったようです。

特徴解説
学名ホワイトマスタード(sinapis alba)、ブラックマスタード(brassica juncea)
名称mustard(英)、moutarde(仏)、芥子(日本)
語源ラテン語のムスツム・アルデンス(燃えさかる新ぶどう酒)
原産地白芥子(ヨーロッパと北アメリカ、黒芥子(中東)、和芥子(中央アジア)、ブラウンマスタード(インド)
種類アブラナ科カラシナの一年草
草丈30cm〜2.4m
使う部位種子



マスタード、からしの特徴



和芥子・黒芥子の味や香りの特徴

和辛子(オリエンタルマスタード)・黒辛子(ブラックマスタード)・ブラウンマスタードと白辛子(ホワイトマスタード)では含まれる辛味成分が異なります。和辛子・黒辛子・ブラウンマスタードに含まれるアリール芥子油(アリルイソチオシアネート)は強い辛味や香りが特徴です。また揮発性が高いので鼻にツーンと来る刺激があります


白芥子の味や香りの特徴

白辛子(ホワイトマスタード)に含まれるベンジル辛子油(パラハイドロキシベンジルイソチオシアネート)は揮発性が弱く辛味や香りも穏やかなのが特徴です。


マスタードの味や香りの特徴

マスタードは主にホワイトマスタードが使われます。前述したとおりホワイトマスタードは辛さや香りがマイルドなのが特徴です。粒入りマスタードや粗挽きマスタードに入っている黒い粒はブラックマスタードでこちらは和芥子なみに辛みや香りは強いです。

市販のチューブ状のものだと、和がつく場合は比較的辛味が強く、マスタードと銘打っていれば白辛子を使って酢や調味料で辛さを抑えた製品が多いようです。マスタードやからしの味や香りについてはマスタード、からしの味や香りと効果・効能でも詳しく解説しています。



からしの粉末の使い方、練り方



水を加えて練ることで辛みや香りが出る

からしは種子のままだと辛さや香りも感じられません。噛んでみると若干の苦味は感じますが、辛みや香りはほとんどありません。芥子をスパイスとして使うなら、粉末にして水を加えて練る必要があります。芥子の種子自体には辛み成分が含まれていないためです。

からしの種子には辛み成分に変化する母体となるシニグリンという配糖体が含まれます。シニグリンは水を加えることでミロシナーゼという酵素の働きにより加水分解され、辛み成分のカラシ油が生成されます。ちなみにシニグリンは和芥子、黒芥子、ブラウンマスタードに含まれ、白芥子にはシナルビンが含まれます。


少量のぬるま湯で練る

辛み成分に変える酵素のミロシナーゼは粉末にしたからしの組織に含まれていて、摩擦によって組織が効率よく破砕されることで酵素が取り出され、酵素が十分に働いて辛みや香りがよくひきたちます。したがって粉末を練る時は少量の水にします。水が多すぎると摩擦力が弱くなり、組織の破砕も不十分となるため、酵素も十分に働けなくなり辛みや香りも弱くなります。

またミロシナーゼはぬるま湯の方が酵素活性が高くなり辛みや香りが強くなるので、練る時は40度ほどのぬるま湯で練るといいです。


5〜10分待ってから使う

練った直後はまだ酵素が働いている段階なので苦み成分のシニグリンも残っています。使う時は5〜10分ほど置いて使うことで、辛み成分がしっかりとできて辛みや香りも強くなります。


実際にからしを練ってみる

それでは実際にからしの粉末を練っていきましょう。今回は和芥子をつかいます。まずは小さじ2杯のからしの粉末を用意します。

和芥子の粉末小さじ2杯

そこに40度ぐらいのぬるま湯を大さじ1/2杯(7.5ml)加えます。

和からしにぬるま湯を加える

そしてよく練り混ぜます。この段階でもかなり芥子特有の香りや辛みが出ています。

和芥子の粉末を練り混ぜる

からしの辛み成分は揮発性なのでそのままだと飛んでしまいます。そこでラップをして5〜10分ほど置いておきます。これで練りからしの完成です。少し匂いを嗅いだだけでも強烈な辛さで鼻につんと来る刺激も感じることができます。

練った和からしをラップして5〜10分置く



練ったからしの使い方、よくあう料理



練りからしによく合う料理

練った和辛子はピリッとした辛さがあるのでおでんやトンかつ、納豆、冷やし中華、シューマイ、和え物、漬け物、煮物などによく使われます。からしレンコンなども有名です。


加熱により辛さや香りが失われる

練ったからしは加熱には弱く、加熱すると酵素の活性が失われ辛み成分の生成が滞ってしまいます。さらにすでにできた辛み成分も熱で分解されるので、辛みや香りが過熱により失われてしまいます。熱々のおでんにつけて食べる分にはいいですが、練ったからしをくわえて一緒にゆでるとからしの辛さや香りを活かすことはできません。


市販の練りからしは?

市販のチューブ入りの和からしは保存性を高めるため、和芥子に洋芥子(主にホワイトマスタード)を混ぜたものを使ったものが一般的です。和芥子と銘打った商品では香りや辛さを強調するために和芥子の比率を多くするのが通例のようでsう。



マスタードの粉末の使い方、練り方



水を加えて練ることで辛みや香りが出る

マスタードもからしと同様粉末に少量のぬるめのお湯を加えて、練ってから使います。使い方はからしと変わりません。使う際は5〜10分置いてから使うと酵素もしっかりと働き、香りや辛みを十分に生かすことができます。


実際にマスタードを練ってみる

マスタードも和芥子との時同様実際に練ってみることにします。今回はホワイトマスタードの種子(シード)を利用します。種子をミルを使って粉末に粉砕するところから始めます。今回使うミルは以下の商品で、amazonや楽天でも人気の商品です。

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まずはミルの中にホワイトマスタードの種子をいれます。

ミルにホワイトマスタードを入れる

こちらがミルを使って粉末にしたホワイトマスタードです。

ホワイトマスタードの粉末

これを和からしの時と同様小さじ2杯分ボールに入れ、そこに大さじ1/2配分のぬるま湯をくわえます。

ホワイトマスタードにぬるま湯を加える

これをよく練り混ぜていくと練ったマスタードになります。

練ったホワイトマスタード

今回も上からラップをして5分から10分ほど置いておきます。そうすると香りや辛みがかなりひきたちました。ただし和芥子のような鼻に来るような刺激や辛さはなく、マイルドな辛みや香りです。

練ったホワイトマスタードをラップして5〜10分置く



練ったマスタードの使い方、よくあう料理



マスタードのよく合う料理

逆にマスタードにはピリッとした辛さはないので、おでんなどに使うとメリハリのない物足りない味になってしまいます。マスタードは辛さはマイルドなので、ホットドックやウインナー、ソーセージなどにたっぷりとつけてマスタードも一緒に味わうといった食べ方が適しています。ほかにもサンドイッチ、ハンバーガー、トンかつ、ウインナー、ステーキ、肉料理、卵料理などによくあいます。


ドレッシングやマヨネーズに

他にもドレッシングやソース、マヨネーズの味つけにもよく使われます。


風味づけに使う

風味付けとしてピクルスやマリネに粒のまま使うこともあります。


加熱によりあえて辛さ抑える場合も

マスタードもからしと同じなので練ったマスタードを加熱すると辛さや香りが失われてしまいます。ですが西洋料理では練ったマスタードを肉に塗って加熱する肉料理(肉の悪魔焼き)があります。こちらは加熱によって程よく失われる香味感を楽しむ料理です。



マスタードの種子の使い方、よくあう料理



通常マスタードは粉末にして練ってから使いますが、マスタードの種子そのままで料理に使うこともあります。ピクルス漬けを作る際に使ったりします。またインド料理では熱した油でいためてからナッツのような香ばしさを出してから使ったりもします。



練りからし・マスタードの使用上の注意



使う分だけその都度練る

練ったからし・マスタードは時間の経過とともに辛み成分が揮発して弱まっていきます。辛みを活かしたいなら使う際にその都度粉末に水を加えて練るといいでしょう。練ったからし・マスタードを放置して辛みが飛んでしまった場合は、再度練り直すことで酵素が活発になり、ある程度は辛さや香りを回復させることができます。



マスタード・からしの料理以外の使い方



抗炎症作用

マスタードは昔から炎症の治療に用いられてきました。東洋ではマスタードの粉末にハチミツを加えせき止めの薬として使っていました。マスタードと亜麻の種子、小麦粉、水を混ぜたものをパップ剤として胸に張り付け、呼吸器観戦の治療に持ちいる民間療法も有名です。


抗ガン作用

マスタードの種子には抗がん作用で知られるイソチオシアネートに分解される、グルコシノレートと呼ばれる成分が含まれています。



練りからし・マスタードの保存方法



練辛子は粉末に水を加えて作られますが、そのままでは辛味や香りが飛びやすいので、お酢やレモン汁、ワインなどを加えて練ってから保存します。こうすると酸欠状態となり、酵素の活性が阻止され長持ちします。



マスタード・からしの購入の仕方



マスタードもからしも練ったものをチューブにいれて市販されていて、スーパーなどでも手軽に購入できます。マスタードやからしは使うごとに自分で水を加えて練ることで、強い香りや辛みを楽しめます。そこで粉末タイプやホール(種子)での商品を購入してもいいです。

粉末タイプは比較的スーパーなどでもよく見かけますが、ホール(種子)でのマスタードやからしは置いているところは少ないです。そんな時はネットを利用すると便利です。ちなみに和芥子(オリエンタルマスタード)についてはネットでも置いてない場合が多いです。和芥子については粉末のものを利用するといいです。和芥子の粉末についてはスーパーなどでもよく見かけます。

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マスタード、からしの歴史



マスタードの歴史

マスタードはからし菜の種子をつぶすと多量の油分が出てくるので、当初はそれにぶどう酒やお酢を混ぜて泥状にして使われていました。現在のようなマスタードは1720年にイギリスのダーハムに住むクレメンス夫人が、小麦の製粉法を参考にからし菜の種子を乾燥させてから製粉化させる方法を開発したのが最初で、これをダーハム・マスタードと言います。

ダーハム・マスタードは和芥子とは違い強烈な辛みもなく、香りも穏やかなホワイトマスタードを使用しています。その後19世紀ごろに現在ではマスタードの代名詞にもなっているコールマン・マスタードが、英国のノーリッツで開発されますが、こちらもホワイトマスタードを使用しています。


芥子の歴史

日本ではからしは平安時代の書物にも調味料として記載されているほど歴史は古いです。



まとめ



マスタード・からしの種類

マスタードにはホワイトマスタード、ブラックマスタード、ブラウンマスタード、オリエンタルマスタードの大きく4種類があります。このうちオリエンタルマスタードは和芥子ともいい、その他の3つは洋芥子ともいいます。からしは粒だと香りや辛みはあまりありません。粉末にして水を加えることで、酵素の働きで辛みや香りがでてきます。使う時は通常粉末に水をこねて使います。

和芥子の使い方

和芥子やブラックマスタード、ブラウンマスタードは香りや辛みが強く、揮発性が高いので、鼻につんと来る刺激があります。和芥子はおでんや納豆、とんかつやシューマイ、煮物、漬物などに使われます。

洋芥子の歴史

洋芥子でホワイトマスタードは香りや辛みはマイルドで、揮発性も低いのでウインナーやソーセージ、ハンバーガー、サンドイッチ、とんかつ、肉料理などにつけて食べられます。ドレッシングやマヨネーズなどにも使います。

マスタード・からしの保存の仕方

練って使う場合はその都度粉末に水を加えてねることで香りや辛みを最大限活用できます。練ったものを保存する場合はお酢やレモン汁、ワインなどを加えると保存性が増します。





※参考書籍
スパイス完全ガイド
食材図典 生鮮食材篇
ハーブ&スパイス大事典
スパイスのサイエンス
スパイスのサイエンスPART2
なるほどなっとく!おいしい料理には科学がある大事典



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この記事を書いた人

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生活知恵袋の管理人で管理人の名前も生活知恵袋と申します。料理研究家です。2002年より当サイトを運営。野菜を中心に食品に関する見分け方や保存方法などを、実際の検証とともに解説した記事を多数執筆。光熱費や水道代の節約、衣服や住まい、掃除に関する豆知識も紹介。

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最終更新日 2018/10/06






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