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上手な揚げ物のコツ



揚げ物の画像


揚げ物調理のメリット


食材の調理方法には焼いたり煮たりと様々なやり方が有りますが、揚げ物調理も代表的な方法の一つです。調理法にはそれぞれメリットデメリットが有ります。焼き調理では火にさらされる表面が先に焼けてしまい、中心部にじっくりと火を通したい場合には向いていません。煮物料理は時間をかけて食材に火を通していきますが、水の沸点は100度なので調理に時間がかかります。

揚げ物調理の場合、200度近くまで加熱された油で調理するので、中までしっかりと火を通しながら加熱の時間も短縮することができます。このように揚げ物調理には比較的時間をかけずにしっかりと中まで火を通すことが出来るというメリットがあります。

油を使う揚げ物調理には上手に揚げるコツというものが有ります。そこでここでは揚げ物料理のコツを料理ごとに適した油の温度や、油の温度の見分け方、食材の揚げる順番、調理器具選び、使う油の種類、油の後処理の仕方などの項目で見ていくことにします。





揚げ物料理の特徴


水で溶いた衣をつけた食材(タネ)を、熱々の油に入れるとまず衣の水分が蒸発し代わりに油がその隙間に侵入します。つぎにタネの水分も蒸発して水蒸気となりますが、衣に浸透した油が膜となり、タネの水蒸気をそのまま中へと閉じ込めます。この熱い水蒸気によりタネはさらに加熱されます。タネの水分は中に保たれるので、揚げ物料理では外側がからっと揚がっていて中はしっとりとした仕上がりになります。

衣を付けない素揚げの場合は食材の表面で水と油の配置転換がおこり、外はからりとして、なかは柔らかくふっくらと仕上がります。フライドポテトなども素揚げ料理の代表的なものです。

衣に浸透した油が中の水蒸気を閉じ込める



揚げる温度


低い温度に適した食材から揚げていく

一度に多くの食材をあげる場合は温度が下がらないように気をつけながら火をかけていれば徐々に温度は上がってくるので、この時間差を利用して最初は低い温度に適した食材から揚げていき、徐々に高い温度に適した食材へと移していくといいでしょう。専門店などでもてんぷらのコースを頼むと野菜、魚介、かきあげと適温の低いものから高いものへと順に料理が出されることがおおいようです。

低温 150〜160℃ 青しそやみつば、ピーマンやししとうなどの緑色を残したいもの。さつまいもやれんこん、餅などでんぷんを多く含むもの。でんぷん類は中まで火が通りにくいので低温で長めに揚げる。
中温160〜170℃ 野菜のてんぷら、唐揚げ、竜田揚げ
170℃ とんかつ、かき揚げ
高温180〜190℃ 魚介類のてんぷら。魚・野菜のフライ。肉や魚などのたんぱく質は、長時間加熱すると硬くなるため、高温で短く揚げる。
190℃ 中身に火が通ったコロッケなど


190度以上の高温には注意

190度以上の高温になると、中に火が通る前にこげついてしまうので、火を止める、油を足すなどして調節してください。油の表面から薄く煙が立ってきているようだと温度も200度を超えてきているので注意が必要です。



温度の見分け方


衣で見分ける

水でといたころもを一滴、油の中に落とします。油の比重は水の0.9で水よりも1割ほど軽いため、落とした直後は油より重い水を含む衣は下に沈みます。時間の経過により水分が蒸発して油と置き換わることで衣は軽くなり、上へと浮き上がってきます。油の温度が高いほど水分が蒸発して衣が浮き上がってくるまでの時間が短くなります。

温度変化
150℃以下底まで沈んでなかなか浮かんでこない
150〜160℃底まで沈み、ゆっくり浮かんでくる
170〜180℃途中まで沈み、すぐに浮かんでくる
200℃沈まずに油の表面で散る

衣での油の温度の見分け方


菜ばしで見分ける

菜ばしが木製なら菜ばしでも油の温度を判断できます。なべの底につかないようにして菜ばしをいれると、菜ばしに含まれる水分が蒸発して泡が出ます。油の温度を高いほど盛んに泡がでます。

温度変化
150℃以下はしの先からぽつぽつと泡が出ます
160〜170℃はしの先から細かな泡が出ます
180℃はし全体から、ワーッと泡が出ます。


揚げ物用温度計を使う

より正確に細かく温度を確かめたいなら揚げ物用の温度計が便利です。鍋に揚げ物用の温度計を設置しておくことで、常時揚げ油の温度を確認することができます。揚げ油は食材を入れることでも温度が下がります。細かく火加減を調整して温度を一定に保つためにはやはり揚げ物用の温度計が適しています。

揚げ物用の温度計はいくつかありますが、計測機器メーカーの大手であるタニタの商品がおすすめです。こちらはデジタルではなくアナログ方式で電池などが必要ありません。

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またクリップがついているので鍋の端に立てかける必要もなく、直接なべに触れずに安定して固定することができます。クリップもプラスチックではなくて鉄製なので、熱による変性も心配ありません。

揚げ物用温度計

クリップは鍋の端に下の画像のように取り付けて固定します。

揚げ物用温度計をクリップで鍋に固定

計測部は野菜140度〜160度、からあげ160度〜180度、冷凍180度〜200度と色分けされて表示されていて一目でわかるようになっているのも便利です。揚げ物においては温度管理は非常に重要です。細かな温度変化もしっかりと確認できる揚げ物用の温度計で、初めての方でも揚げ物をおいしく仕上げることができます。



揚げる順番


動物性の食材は、揚げると脂肪が溶け出し油が汚れるので、野菜、肉、魚介の順に揚げていきます。パン粉や小麦粉のついたフライは、てんぷらのあとに揚げます。


揚げ物用の鍋選び


底の深い鍋を選ぶ

中華なべやてんぷら鍋など、底が深いなべが揚げ物には適しています。揚げ物は高温で短時間に揚げてしまうことが重要ですが、深い鍋ならたくさんの油が入るので食材を入れても比較的油の温度を一定に維持することが出来ます。また深さがあるので、食材が底にくっついて浮かんでこないといった心配もありません。

揚げ物におすすめの鍋の選び方


サイズが大きな鍋を選ぶ

なべのサイズも小さいものより大きいものの方が好ましいです。大きければそれだけ食材による油の温度の変化も少なくてすみます。お店のなべなどは大きなサイズなので、適温を維持することができ、揚げ物には適しているのです。家庭用のなべで、小さいものは、一度に入れる量を控えるなどしてください。


鉄製で厚手の物を選ぶ

なべの素材は鉄製が保温性があるので、揚げ物にむいています。なべの厚さは厚手のものを選びます。薄いものだと油の温度が高くなりすぎて、食材の表面だけがこげ、中まで火が通らなくなってしまうことがあるからです。揚げ鍋なら以下の商品がおすすめです。揚げ鍋についてさらに詳しく見たいなら揚げ物におすすめな鍋の選び方で解説しているので合わせて参考にされてみてください。

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揚げる前の下準備


材料の水分をよく切っておく

材料はペーパータオルや、布巾で水分をよくふき取っておくことで、揚げる際の油はねを抑えることができます。また水分が残っていると衣がはがれやすくなります。


ころもや粉はつけすぎない

ころもや粉をつけすぎると、なべの底に落ちて焦げ付き、油の質が低下してしまう原因となります。



揚げ物に使う油は?


てんぷらに適した油は?

揚げ物でもてんぷらとフライでは適した油も異なります。そこでまずはてんぷらに適した油を紹介します。てんぷらに使う油といえばてんぷら油やサラダ油、ごま油などが代表的なものです。 てんぷら油、サラダ油はよく精製されているため、くせがなくコクがいまいちな半面、油切れはいいです。たいしてごま油はもともと風味がいいので精製度も抑えられており、揚げ物においてはコクが生きてきます。ただし精製度が低い分油切れも悪くなってます。

そこで使用の際は両方を混ぜて使うと、コクがあって油切れもよく、おいしく仕上がります。配分はてんぷら油 or サラダ油1ならごま油はその3割ほどの割合です。

サラダ油ごま油
コクいまいち強い
油切れ良い悪い

てんぷらにおすすめの油の配合


フライに適した油は

とんかつや串カツなど乾燥した固いパン粉をつけて揚げるフライなら、てんぷら油やサラダ油、ごま油などの植物油だけでは物足りません。このまま揚げるとパン粉がバリバリと固くなり、食感もあまりよくありません。

ラードやヘットなど常温で固まりやすい動物油脂を使うと、あげたフライが冷めた際に油がちょうど衣の周りで白く固まり、しっとりとした食感になり、中の肉ともよくなじみます。フライが時間がたってもおいしいのは動物油脂のおかげなのです。フライの場合は植物油脂だけでなく、ラードやヘットもまぜて使うといいでしょう。揚げ物に適した油については揚げ物油の種類とおすすめ、てんぷらやフライに合う油は?でも詳しく解説しています。


材料を揚げる際のポイント


一度にたくさん入れない

揚げ物をする上で大事なのは、適温を維持することです。油の入ったなべに一度にたくさんの材料を入れてしまうと、温度が急に下がってしまいます。なぜ下がってしまうのかというとそれは材料に含まれる水分が蒸発する際に周囲の熱を奪う反応が起こるからです。こうして奪われた熱を気化熱といいます。要は水が蒸気となるときにまわりの油の温度を奪うことで油の温度が下がるわけです。

とはいえ油の温度は200度近くあるのに水の蒸発による気化熱だけでそれだけ温度が下がるのかと思う方もおられるかもしれません。その点について詳しくみていきます。まず水も油も温度を上げるためには熱量を加える必要があります。また逆に熱量が奪われると温度はさがります。加えた熱量で上がる温度は水と油では異なります。油は水のおよそ半分の熱量で温度が上がります。逆に半分の熱量が奪われるだけでも温度は下がります。

水は気化する際周囲から熱量を奪いますが、油は少ない熱量の消失でも温度が下がるので、水の蒸発でも油の温度は下がりやすいのです。油は熱しやすくさめやすいといわれているのもこうしたことが理由です。

一度下がった温度を再び上げるには時間がかかるので、その結果油を吸いすぎて油っぽい揚げ物になってしまいます。また油は水よりも少ない熱量で温度変化するので、ちょっと火力をいじっただけでも温度が高くなりすぎて焦げてしまうこともあります。こうしたことから油はなるべく温度を下げずに一定の温度を保ったほうが揚げ物の仕上がりもよくなります。そこで入れる食材は油の面積の1/3から多くても半分までに抑えるようにしましょう。かき揚げのような表面積の多いものは、油の温度も一気に下げてしまうので、これらは一度に入れる量を特に控えめにしましょう。


食材ごとに入れる量を加減

カキやえびといった水分を多く含む食材は、揚げるとたくさんの水蒸気を出すのでそれだけ気化熱も多くなり、油の温度もさがりやすくなります。こうした食材は野菜などよりも量を控えめにして入れるようにしましょう。またコロッケのような塊状のものよりも野菜の書き上げやポテトチップスのような平べったいものの方が表面積が大きい分油の温度もさがりやすいので、こちらも他の食材よりも一度に入れる量は控えめにしましょう。


揚げ具合の確認

一般に揚げ物の揚げ具合は材料から出る泡で判断します。油に入れた際にでていた大きな泡が、小さく均一になって静かになれば中までよく火が通った証拠です。衣に含まれる水分がすっかり油と入れ替わると、泡もほとんどでなくなり、水が油をはじく「ジュージュー」というと音も小さくなっていきます。慣れてくると音だけで揚げ具合を判断できるようになります。


揚げかすはこまめにとる

揚げかすはまめにとるようにします。そのままにしておくよりも油の質の持ちが長くなります。また焦げ付いた揚げかすが食材などに付着するのも防げます。



油の切り方のポイント


揚げ物受けの網にはペーパーをかぶせない。

油きりはしっかりとします。揚げ物を乗せる網の上にペーパーを引くと、ベタッとしてしまいます。紙は網の下に引いて、油受けとして利用します。


揚げ鍋の上の網にはのせない

揚げ鍋にはちょうど揚げ鍋の一部に網がかかっていて、揚げたものをそこにのせて油を切れるタイプの商品もあります。切った油が鍋に落ちるので油が無駄にならない点がメリットですが、あまりお勧めはできません。

なぜなら鍋の上では蒸発した水蒸気が出ているので、その上に揚げ物を置くと、せっかくカラッとした衣がしんなりとしてしまうからです。油を切るなら離れた位置にバットを置いてそこで切るようにしましょう。


揚げ物置くときは重ねない。

揚げ物を重ねておくと重みで衣の油が染み出し、さらに冷めてくると内部に詰まった水気も抜け出てくるので、自分の衣だけでなくまわりの揚げ物まで油や水でべちゃっとしてしまいます。揚げ物は重ねずに立てておくようにしましょう。



油の後処理


使った油はまだ熱いうちに越しておけば、次もきれいに使えます。油は光、空気、熱の3つの要因で酸化してしまいます。使った油はそのままにしておくのではなく、冷暗所で保管しましょう。油を捨てるときは、流しに捨てるのではなく、新聞紙や布切れなどにしみこませて、牛乳パックなどに詰めて捨てます。市販の油処理剤を利用してもかまいません。




※ 参考文献
なるほどなっとく!おいしい料理には科学がある大事典
新装版「こつ」の科学 調理の疑問に答える


最終更新日 2019/01/09
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この記事を書いた人

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生活知恵袋の管理人で管理人の名前も生活知恵袋といいます。料理雑学研究家です。2002年より当サイトを運営。野菜を中心に食品に関する見分け方や保存方法などを、実際の検証とともに解説した記事を多数執筆。光熱費や水道代の節約、衣服や住まい、掃除に関する豆知識も紹介。

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